救いの手

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下ではすでに戦闘が始まっているのか、小さく見える人影がせわしなく動いている。 マーナと名乗ったドワーフは、ゴーレムの肩の上で、何やら小さな箱のようなものを動かしながら、 器用にゴーレムを操っていた。 その目線と同じ位置に、僕が握られている巨大な手がある。 「盟主~その男をこちらへ~お願いします~~」 「おっけえ~~今行くよぉ~~」 ズシン、ズシン、と、移動の度に半端じゃない振動が来て、胃がひっくり返りそうだ。 ゴーレムは僕を手に握ったまま、建物の反対側へ歩を進める。 ちょうど、西側の塔から、東側の塔へと、真逆に移動した形だ。 その――破壊されていない――東の塔の窓から、2人の人物の姿が見て取れた。 一人はセアラ。 こぼれるような笑顔で、こちらに手を振っている。 もう一人はアスタユル。 大声でマーナと会話していたのは、おそらく彼だったのだろう。 「ほい、お待たせ」 「お手数をおかけしました、盟主」 マーナは器用にゴーレムの手を開かせると、掌に僕を乗せた格好で、塔の窓に横付けしてくれる。 おっかなびっくり足を踏み出すと、セアラとアスタユルの手が差し出された。 右手にセアラの、左手にアスタユルの握力を感じながら、一気に窓の珊へ飛び移る。 地に足の着いた安心感からか、どっと汗が噴出すのがわかった。 「あ、ありがとう。二人とも、牢から抜け出せたんだね」 「うむ、まあ・・・盟主のおかげでな」 「フロイさんも無事で何よりですわ」 まるで、旧知の友と再会したかのような嬉しさがこみ上げる。 知り合ったばかりの二人であるのに。 「・・・あ、じゃあ、君たちも、CGゴーレムに掴まれて運ばれて来た・・・とか?」 「「・・・・・」」 セアラはひきつった笑みを浮かべ、アスタユルは右手の中指で眼鏡の位置を直した。 無言の意味は推して知るべし。
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