70人が本棚に入れています
本棚に追加
下ではすでに戦闘が始まっているのか、小さく見える人影がせわしなく動いている。
マーナと名乗ったドワーフは、ゴーレムの肩の上で、何やら小さな箱のようなものを動かしながら、 器用にゴーレムを操っていた。
その目線と同じ位置に、僕が握られている巨大な手がある。
「盟主~その男をこちらへ~お願いします~~」
「おっけえ~~今行くよぉ~~」
ズシン、ズシン、と、移動の度に半端じゃない振動が来て、胃がひっくり返りそうだ。
ゴーレムは僕を手に握ったまま、建物の反対側へ歩を進める。
ちょうど、西側の塔から、東側の塔へと、真逆に移動した形だ。
その――破壊されていない――東の塔の窓から、2人の人物の姿が見て取れた。
一人はセアラ。
こぼれるような笑顔で、こちらに手を振っている。
もう一人はアスタユル。
大声でマーナと会話していたのは、おそらく彼だったのだろう。
「ほい、お待たせ」
「お手数をおかけしました、盟主」
マーナは器用にゴーレムの手を開かせると、掌に僕を乗せた格好で、塔の窓に横付けしてくれる。
おっかなびっくり足を踏み出すと、セアラとアスタユルの手が差し出された。
右手にセアラの、左手にアスタユルの握力を感じながら、一気に窓の珊へ飛び移る。
地に足の着いた安心感からか、どっと汗が噴出すのがわかった。
「あ、ありがとう。二人とも、牢から抜け出せたんだね」
「うむ、まあ・・・盟主のおかげでな」
「フロイさんも無事で何よりですわ」
まるで、旧知の友と再会したかのような嬉しさがこみ上げる。
知り合ったばかりの二人であるのに。
「・・・あ、じゃあ、君たちも、CGゴーレムに掴まれて運ばれて来た・・・とか?」
「「・・・・・」」
セアラはひきつった笑みを浮かべ、アスタユルは右手の中指で眼鏡の位置を直した。
無言の意味は推して知るべし。
最初のコメントを投稿しよう!