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「召喚師フロイ・ライラだな。貴殿の身柄を拘束させてもらう」
「・・・は?」
春の日差しうららかな、とても平和な午後。
突然の来訪者は、開口一番、とんでもないことをのたまった。
思わず、陽気につられて居眠りして、夢でも見てしまった
んじゃないかとさえ思う。
「どういう意味でしょうか?」
冷静に問い返したが、相手は鎧兜の下から覗いた髭の口元を、不遜げに歪めるだけだ。
「僕には、そちらに出頭する身の覚えがありません。納得いく説明をいただかないと」
言葉をつなぎながら、状況を確認する。
目の前の鎧の男は、胸に刻まれた文様から、ギラン地方の守備隊員だと推測される。
背後に一人、ダークエルフの女が控えていた。
身なりからして、魔術師だろう。
扉の外にも、何人かの気配があった。
まだ、ウォーロック(召喚師)の名を冠していない、一介のウィザード(魔術師)の家にやって来るにしては、少々大袈裟すぎやしないだろうか。
「拘束する、とことわったはずだがね?これは任意同行ではない。貴殿に拒否権はないのだよ」
鎧の男の態度は、にべもない。
「だから、あなた方に何の権利があると言うんですか。母なる女神、アインハザードに誓って、僕には何も やましい所は・・・」
「では、聞こう。貴殿は召喚師の審査に臨む際、一度もミュー族を召喚していないそうだが、それは なぜかね?」
ぐ、と言葉に詰まった。
あまりにも、唐突な質問であったこと。
そして、僕にとってある意味、コンプレックスを突かれる事柄であったがために。
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