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「おい、若者っ!こっちを向けぃ!」
突然の言葉に振り向くと、いつの間にかマーナがすぐ背後に迫っていた。
ゴーレムの腕を通ってきたのだろう、先程まで僕が立っていた掌の上にいる。
その手には、小柄な体躯に不釣合いな、無骨で大振りの斧が握られていた。
「動くなよ!?死ぬぞっ!」
得物を両手に、振りかぶる。
はい?と問い返す暇すらなかった。
「ほおぉぉぉぉはいやあああああっ!!」
気合一閃!
青い軌跡が弧を描く。
残像すらも残さずに、僕の両手を重量を持った風が駆け抜けた。
重い、というか、痛い。
感覚を認識したのと同時に、ぱきり、と乾いた音を立てて、腕にあった何かが砕けた。
魔法封じの戒めの腕輪だと気が付いたのは、それがガラクタになって床に落ちた後だった。
体内のマナが開放されたのだろう、一瞬、強い動悸と微熱が体内を駆け巡り、すぐに正常に戻る。
かすっただけなのに、衝撃に手首が痺れて、力が入らなかった。
「うむ、これでよし。やっぱ、魔法使えないままじゃ、嫌だろ?」
「こっここここ・・・これっ・・・や、やるならやると一言下さいよおお!」
当たり所が悪かったら、今頃手首から先が無くなっている所だ。
「ん?言ってなかったか?動くなと注意はしたつもりなんだが」
「・・・いえ、もういいです・・・。助かりましたから・・・」
ちらりと後ろを盗み見ると、二人とも自分の手首を抱えながら、がくがくぶるぶる、震えていたりする。
あー・・・同じ目に遭わされたな、これは。
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