70人が本棚に入れています
本棚に追加
「アルト、どうしたの?」
「ブランシュ?」
反応していたのは、他の猫達も同様だった。
主人から体を離して、警戒するような視線を部屋の奥へ向ける。
―――イヤ、イヤ、イヤ。 モウ、ヒトリボッチハ、イヤ。
―――イタイ、クルシイ、サミシイ、カナシイ、キライ、キライ、キライ。
―――ワタシダケ、ドウシテ、アナタタチダケ、ドウシテ。
声は次第に大きく、強く、膨れ上がってきた。
その強烈な感情に呑まれそうになる。
これは何だ、誰の感情だ。
ウウウ・・・と、腕の中のマオが唸り声を上げる。
体が膨らんでいるのは、緊張と警戒に毛が逆立っているためだろう。
「何かが・・部屋の奥に」
頭がクラクラして、そう言うのがやっとだった。
自分でも驚くほど、声がしわがれている。
立っていられなくなって、子馬のように地面にくず折れた。
「おい、どうした」
「フロイさん!?」
どうした、と問われても答えようがない。
自分でもわからない。
まるで、何かに力を吸い取られているかのようだ。
この感覚は、魔法を使い過ぎた時の疲労感に似ている気がする。
そして今わかることは、この体調の異常は僕だけに現れているということ。
それから多分、二人にはこの声が聞こえていないのだということだ。
最初のコメントを投稿しよう!