地下で蠢くもの

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突然、風が啼いた。 稲妻のような炸裂音が、場を震撼させる。 それは広大な地下空間に反響し、重なり合う。 闇が蠢き、そこから生まれ出たかのように、不気味な影が姿を現した。 それは漆黒の、ブヨブヨとしたゼリー状の塊。 人間が一人、丸ごと入れそうな大きさの、闇色の卵。 そこから、人間の腕ほどあろうかという、太い触手が無数に生えていた。 果たして、触れたらどんな感覚なのか。 表面は嫌らしく、てらてらと輝いているのが、一層不気味さを増していた。 黒い触手は、それぞれに律動を繰り返している。 空を切る音。 地を叩く音。 床を這いずる無数のそれが、不協和音を奏でる。 「なんだ、アレは・・・」 アスタユルが呻いたが、僕はその顔を見ることすらできなかった。 重力に逆らえなくなって、次第に体が沈みこむ。 膝立ちだけでは体を支えられなくって、手を付き、四つん這いになり、それさえも辛くて岩のようにうずくまった。 全身が鉛になっていくみたいだ。 「危ないっ!!」 セアラが悲鳴をあげた。 次いで、湿った物を切り裂くような、嫌な音。 ふぎゃおう、と、マオの威嚇の声がして、目の前に触手の先端が落ちてきた。 僕に向かって伸びて来た触手を、鋭い爪で切り落としてくれたらしい。
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