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「・・・僕はキャットを使って、きちんと審査に合格してみせました。それに、僕がミューを使わないことが、今回の用件に何の関係があるというんですか」
「いやなに、人前でミューを使えない事情でもあるのかと思ってね。たとえば、公にできないような犯罪に、召喚獣を使っているとか・・・」
「あなたは僕を侮辱しに来たのですか!?」
「いや、もう結構。この先の事情聴取は、向こうで行おう」
「お断りします!」
思わずカッとなって声を荒げる。
この不躾な態度といい、こちらの言い分を聞かない不遜さといい、挙句の果てに言いがかりか。
全てが気に入らなかった。
男は小さく鼻を鳴らすと、背後で控える女魔術師に目配せする。
なるほど、腕づくで、というわけか。
光栄すぎて涙が出てくる。
「拒否権はない、と言わなかったかね?」
「断ると言ったのが聞こえませんでしたか?」
「貴様に選択させるつもりはない」
「その言葉、そっくり返してやるよ」
互いの語彙が乱暴になるのも、仕方ないことだろう。
男が剣を引き抜く、金属のこすれる音。
女の唇が紡ぐ、呪文のささやき声。
僕の手の中に収束する、魔力の輝き。
それらは全て同時に、我があばら家の空気を震撼させた――。
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