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僕は踵を返すと、逆方向に走り出した。
そのまま、マオを取り押さえている男達に掴みかかる。
片方の男がマオから手を離し、応戦してきた。
篭手に包まれたままの腕で、鋭い突きを繰り出してくる。
続け様に何発か喰らって、世界があらぬ方向に回るような感覚に襲われた。
わかっている。
召喚獣を奪われ、魔法すらも封じられた召喚師が、訓練された兵士相手に肉弾戦でかなうはずなんかない。
でも・・それでも、マオだけは逃がしてやりたかったんだ。
体が傾ぐのを感じながら、それでも視線はマオに釘付けになっていた。
マオの体をすっぽりと包む袋は、時々あらぬ形に変形を繰り返している。
中で暴れているのだろう。
だが、やがて何重にも外から縄をかけられて、その動きすら封じられてしまう。
それでも、みぎゃみぎゃ、くぐもった声で抵抗の意を示していたが、2、3発蹴りを入れられて、やがて大人しくなった。
目の前が赤く染まったのは、怒りのせいなのか、こめかみを伝う血のせいなのか。
どうして。
どうして、こんな目に遭わなきゃいけないんだ。
僕が何をした。マオが何をした。
何の権利があって、お前達なんかに・・・。
「いきがっていても、この程度だな」
背後から聞こえた声と共に、頭に鈍い衝撃を感じた。
地面が近づいてくると思ったのは一瞬。
すぐに体の所在がわからなくなる。
マオ・・・ごめんな。守ってやれなくて。
視界に幕が降り、僕の意識は闇から伸びてきた手に強引に奪い取られていった。
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