投獄

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にゃあああん    ・・・イカナイデ にゃおううう    ・・・ヒトリニ シナイデ 誰かが泣いている。 とても悲痛な声で。 みゃああお     ・・・モドッテキテ みゃああん     ・・・イイコニスルカラ 誰かが呼んでいる。 とても切ない声で。 まどろみと覚醒の間の中で、僕は小さな魂の存在を感じていた。 これは、僕のマオだろうか? 泣かなくていいと言ってやりたかった。 自分はどこにも行かないからと。 その頭を撫でてやりたかった。 自分はちゃんと傍にいるからと。 白くて、ふわふわで、まんまるで、ぽってり。 生意気で、気まぐれで、可愛くて、ちょっとドジ。 誰よりも大切な、僕だけの猫。 異界の海でただ一人、僕の声に応えてくれた存在。 今、行くから。 すぐに、そこに行くから。 僕は虚空に手を伸ばす。 泣かないで。 僕はここにいるよ――。
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