ー手紙ー

祖母の涙

妊娠の経過も順調だったある日私は、自分の不注意から仕事中に転倒してしまった。

幸い胎児に影響はなかったが念のためしばらく自宅安静となった。

知らせを聞いた祖母が慌てて様子を見に来てくれて、元気そうな私を見て胸をなでおろしていた。

私はその時何故か祖母の妊娠中の事が聞きたくなった。父は終戦の間近に生まれている。確か防空壕の中で生まれたと聞いた。
私は不意に、
「おばぁちゃんが妊娠中の時って戦争中だよね？大きいお腹で疎開したの？つわりとかは？大変だったんじゃない？」

言った後で自分でも驚いた。なんでこんなこと聞いたんだろう？おばぁちゃんが戦争の事は話したくないの知ってたのに。
あの時のおばぁちゃんの悲しい顔もう見たくないのに。