5/7
前へ
/127ページ
次へ
  「そんなことない!! その人のこと 君が本当に心から好きだった証拠じゃないか。いや、今でも好きなんでしょ? その彼が羨ましいよ。そんな風に想われているなんて…。」     僕は とっさに掴んでいた手を 肩から離して、彼女に背を向けた。   彼女の瞳は涙でいっぱいになっていた。 きっとまた、彼のことを思い出したんだろう…。     その時、また ざわぁ~っと海風が砂浜を吹き抜けた。   僕は思わず、また君に寄り添った。   「もう帰ろう。風邪を引くよ。」   彼女はまだ、黙ったままだ。   どうしようかと僕が考えていると、君は小さな声でこう言った。   「その人… 海が大好きな人だったんです。 ‥‥‥ だから今日 海が見たいって言ったんです。」     彼女の頬には、一筋の涙がつたっていた。 一体 どうしてあげたらいいのか、僕は分からなくなった…。      
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加