1332人が本棚に入れています
本棚に追加
近藤がいなくなって、また三人は沈黙だった
《帰るって言わなきゃ。この人達に迷惑かけちゃいけない…でも、どうやって生きていくの?…言わなきゃ…言わなきゃ…》
「あの~ワタシ…」
「お華さん!今日はもう暗くなってしまったのでここに泊まっていくのはどうでしょう?」
沖田から意外な提案があった
「沖田さん!何を言うんだ。泊めるなどできるわけないだろう。局長も副長も良しとは言わないはず。それに…一晩とはいえ女子を屯所に泊めたなどと隊士達が知ったら、組の秩序が乱れるぞ!」
激しく斎藤が反対する
「そうでしょうか?この暗いなかお華さんを帰して何かあったら、その方が後悔すると思うんです。とにかく一度、近藤さんと土方さんに相談してみましょう。」
「あんたがそこまで言うなら構わんが、俺はこの先は関わらない。じゃあ失礼。」
斎藤はワタシと目を合わせる事なく不機嫌にその場を去った
「ごめんなさい。ワタシが帰ればこんな事にならなかったですね。暗くても構いません。帰ります。お世話になりました。」
ワタシはゆっくり歩き門の外へ出た
沖田が何度か止めたが受け入れなかった
これ以上迷惑をかけないように
振り返ると沖田は心配そうな顔でワタシを見送っている
「ありがとう!さようなら。」ワタシは無理して笑い手を振った
また歩きはじめると涙が溢れた
また一人になる寂しさと不安しかなかった
沖田の姿が見えなくなる場所まできて、泣き崩れるようにうずくまった
この時代で人のやさしさを知ってしまった事を後悔した
最初のコメントを投稿しよう!