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香田は空寒いものを感じた。
報告書によれば日向少年は表では優等生で通っているが、裏では夜の街を徘徊して問題を起こす二面性を持っている。
それも両親の転勤を機に始まったのを考慮しても精神的に不安定なのは確かだ。
それまで家事全般に幼い妹の世話までそつなくこなし、県下随一の進学校で常にトップクラスの成績をキープしてきたと聴いている。
きっと今までいろいろな責務と重圧に耐えて必死に頑張って生きてきたのだろう。
それが母親の再婚で脆くも崩れてしまった。
(手加減を知らない社長の事だ。この子が反抗し続ければきっと取り返しのつかない事になる。)
先程見た線の細い少年を思い浮かべた。
儚く消えてなくなりそうな繊細なこの少年を香田は出来る限り守ってあげようと静かに誓った。
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