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「お―い!藤田、こっちこっち!待ってって!」
(信じられない‥‥)
唐突に大声に呼ばれて振り返るとにこやかに手を振り走り寄って来る友人の姿があった。
恥ずかし気もなく大きく手を振りながら駆け寄ってくる青年は正に大型犬を思わせる。
美由紀は、桜の舞い散る広いキャンパスの芝生を横切って徐々に近付く高校からの数少ない男友達に溜め息が出た。
大介は目の前まで来ると、ハッハッと肩で息をして目をキラキラさせて‥‥
(大介に尻尾があったら絶対にパタパタしてるわね。)
念のために耳は生えてないかと確認してしまう。
「昨日、帰ってきたんだ!」
大介の得意満面な笑顔に美由紀は驚いた。
これで通じる所が自分でも凄いとなと思う。
そう、美由紀と大介の共通の友人が帰ってきたのだ。
春の風に連れられて舞い戻った彼はどんな風に変わったのか‥
あの頃、美由紀は彼の存在が淡い夢のようだと思って憧れていた。
再開した時も彼はあの頃と同じなのだろうか‥‥‥
「大介、良かったね!」
「おおっ!」
嬉しそうに頷いた大介はやっぱり犬みたいだと美由紀は密かに思った。
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