愁いの姫君

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. 香田 知晴(コウダトモハル) 27才。 国立大を卒業後、彼は一流と言われる企業に難なく就職した。 一見穏やかな人当たりが良い外面に人は騙され易いがなかなか目端の効く強かな青年だ。 海堂グループの中枢である海堂建設に勤めて新人研修の後に本社勤務となり、3年も経たずに海堂グループ本家の長男である海堂圭一の私設秘書に大抜擢された事をみても彼の優秀さが伺えるというものだ。 私設秘書とは主に海堂専務のプライベートの雑事から主なスケジュールの管理までと多岐に渡る。 本社には業務秘書室があり、常に複数の秘書と管理室長がいるが四六時中次期社長と噂の高い海堂にピッタリと張り付いていられる香田は正に別格扱いなのだ。 冷徹で厳格、時に仇なす者には容赦なく破滅に追いやる海堂専務は社員にも畏怖の念を抱かせる。 その海堂専務に影のように寄り添い従う青年にやっかみが無いでは無いが、何しろ香田の代わりをしろと言われても皆二の足を踏んでしまう。 直接専務自らに関わるばかりに、もし不興をかえば直ちにクビが跳ぶ。よくて聞いた事の無いような下請け会社の倉庫係りか、はたまた未開の地で原住民と道路整備なんて言う噂もある。 海堂の身近になればなる程重役からも一目置かれるエリートになれるが常に転落の危険性を孕む。 高みに登れば登だけ転落の衝撃が大きくなる訳だ。 .
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