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「なあ、お願いだよ。飼ってやってくれ」
僕の目の前には親友の大樹。
一体、何を話してるかというと…
「お前一人暮らしだろ。だから、なっ?ハナの赤ちゃん一匹貰ってくれよ」
大樹の家で飼っている猫のハナが赤ちゃんを産んだらしい。まだ産まれてそんなに経っていないけど今から飼い主探しをしているみたいだ。
「話し聞いてるか?」
「あ、ああ。まあね」
「俺は信用出来る奴に大事なハナの子供を貰って欲しいんだ。お前なら信用出来るし、安心なんだ」
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど………大家さんがどういうか」
「じゃあ聞いてみてくれっ」
こうして、僕は放課後大家さんに会いに行くことになった。
大樹と一緒に……。
ピーンポーン
大家さんの家は僕の暮らす《夢猫荘》の隣にある。
見た目からして日本の家って感じの古めの庭付き一戸建て。
夢猫荘も少し古めだけど。見た目程、悪くない。
チャイムを押してしばらくした。
まだ、誰も出てこない。
「誰もいないのか?」
大樹が呟いた。
誰もいないならそれでいい。聞いとくよって言って、今度駄目だったってそれで断る事が出来る。
のに、
「あら、いらっしゃい」
買い物袋を持った大家さんが帰って来てしまった。
仕方ない、覚悟を決めるしかなくなった。
「こんにちは、大家さん。あの……ちょっと聞きたい事が」
「ええ、何かしら?」
「えーと、そのあの…」
ダメだ。
この質問で僕の今後が決まってしまう。それに質問の答えを僕は知っていた。
「ここで動物って飼ってもいいんですか?」
痺を切らした大樹が言ってしまった。
「いいわよ」
凄くあっさりと言われる。しかも笑顔で。
ああ大樹、お願いだからそんなに嬉しそうな顔しないでくれ。
「何を飼うのかしら」
「猫です。いやあ、うちの猫が子供を産みまして、こいつに貰ってもらうんですよ」
話しは進む僕を置いて。
諦める他ないだろう。
そして、一ヶ月は過ぎた。
あっという間に。
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