Ⅰ チサト

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少なくともあの時の私は無能で、人との会話を得意とする方ではありませんでした。 今でさえ、この手紙を書く手がふるえてしまう程です。 人と一対一で話をする時、私はあまり言葉を発していなかった事を謝りたい気持ちです。ごめんなさい。 私はいつも、次の言葉を考えるために時間がかかってしまうのでした。 流君と初めて出会い、流君の方からあいさつをしてくれた時も私はただ、うなずいたり、首を横にふるだけでした。 初対面の相手となるとくちびるの重さが一気に加速して、顔全体にも重さをいつも感じるのです。
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