ある転校生

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その隣の女子生徒は膝に手を置いて、首だけをこちらに向けていた。 赤いメガネをかけて、髪は後ろで結んでいる。それがなんとも似合っていた。 僕は肩にかけていたかばんを机に下ろして、その椅子に腰掛けた。 その時授業は数学で、説明している途中と思われる公式を呪文のように唱え始めた。 数学の先生である姉は、ちらちらと何回かこちらに目を向けているのが分かった。 でも、そんなのは無視である。 転勤族と呼ばれる親のために、いつの間にか表面上は友達の作り方をマスターしていた。 積極的に話しかける事である。それを実行している最中なのだ。 ただ、相手は話を聞いているだけなのだが、それをよく聞いているらしく、たまに小さな声で肯定してくれていた。
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