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優喜は雑多な品物にあふれた店内を見渡し、所在無げにそこへ立ちつくす。
実際…何の店なのか見当もつかない。骨董品屋か、質屋か、とにかく並べられた物は歴史を経た気配があり、そして統一性が皆無だった。
ティーセットを盆に載せて戻ってきた店主が、いまだ立ちつくしている優喜に「おや、」と意外そうな顔をした。
「どうぞ、お掛けになってください。立ち話もなんですし」
三度、着席することを勧めると、ソファの横に立って向かいの席を示す。
優喜が座らなければ彼も座らないだろうことは簡単に予想できた。座らなければいけない空気を読んで、優喜は沈みそうなソファに腰かけた。
店主も、優喜に遅れて腰かける。裾の短いベストの隙間からリボンタイが覗いている。
バーのマスターのような恰好の男を前に、優喜は落ち着かない様子で視線をさまよわせた。
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