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丑三つ時、とは言うけど、ちっとも怖くない。空気が澄んでて、雨上がりなんか最高。車の通らないアスファルトに寝そべると、たまに流れ星が見えるんだ。
「痛い…!」
「え?」
「てててて、手を踏んでます!」
「あっ…!ごめんなさいっ」
慌てて足を退ける。人、いたんだ。
「…そっちじゃないです。」
「すみません暗くて…」
「貴方も流れ星観に来たんですか?」
「はい、」
反対の足を退かして、うっすら見える男性の横に座った。
「同じこと考える人がいると思わなかった。」
男性はちらりと私を見た。暗闇の中でもほほ笑んでいるのが解る。
「今日は空が澄んでるから、いくつか見えるかも知れませんね」
「…ええ。」
遠くから蜩の声が聞こえる。
「朝晩冷えますね、最近。」
「そうですね、このまま寝たら確実に風邪ひきますよね。」
「はは。早めに帰ったほうがいいみたいですね、」
「見えたら帰ります。貴方は?」
「もう2つ見たら。」
「そうですか、」
それからどれくらいたろう。流れ星、見えない。
「んっ…」
気づく。寝てた、私。お腹痛いよ、冷えたのかな。
「あれ…」
あの人いない。どうしたのかな。
もう朝だし、ベッドでもう一眠りしよう。
家に入ると、朝ごはんを作っていた母が何かを叫んでいる。どこでなにしてたのこんなじかんまで。
「うるさいなあもう。」
おやにむかってそんなくちのききかたするんじゃないの
ベッドに入って大きく息を吐くと、男性の声が聞こえた気がした。
私は、流れ星を見ていたのかも知れない。
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