※亡くしたもの

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※亡くしたもの

ある晴れた日曜日の朝   子犬を買いました   殴っても殴っても 縋りつく瞳が恐ろしくて   僕の瞳を抉りだしました     もう何も見えないので 恐く有りません   なのに... この違和感はなに?     肉の中を這う 生暖かい感触   癒そうと必死になる 息遣い   止めてくれ   止めてくれ止めてくれ止めてくれ     ある雨の土曜日 子犬は冷たくなって いました   肉を這う暖かい温もりは もう有りません     変わりに冷たい熱を 感じます   零れる涙は 何故 急速に熱を失っていくのでしょう?     頬をひんやりとした 風が通り過ぎます       ボクヲキラッテクレタラヨカッタノニ...   その晩僕は 子犬を抱いて眠りました     翌朝目が覚めて おはよう と 挨拶をしてみても その瞳が開かれることは 有りません   あれほど 恐ろしく感じた瞳が     愛しくて   愛しくて      抉り出して 壁に貼りつけました     イツマデモ一緒 ダヨ   でも 僕には その瞳が    見えないんです
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