プロローグ

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        4月初旬。   例年ならまだ五分咲きのはずの桜たちが、今年はすでに満開に近い。   きっと、今年の冬はいつもに比べて暖かかったからだろうなあ…なんて考えながら、咲き誇る桜を眺めながら歩いている僕は、今日から高校生になる。   そう。今日はずっとずっと憧れていた、私立桜花学院高等部の入学式。     桜花学院は、地元では結構有名な進学校で。特に高等部への外部…つまり、公立中学校からの編入試験は毎年、倍率が7倍ともいわれている。 だから、こうして入学できるってことが、誇りに思えたりするわけで。 今日のこの穏やかな天気も、僕のことをお祝いしてくれてるんじゃないかと思うほど舞い上がっていた。             だから僕は、全然予想もしていなかったんだ。         例年なら五分咲きの桜も、昨夜の天気予報では雨だといわれていたはずなのに、今朝は雲一つなくあたたかな春風が吹いているだけのこの天気も… 怖いくらいに穏やかな全ての事は、     これから僕の身に次々と降り懸かる嵐のような出来事の、     前触れでしかなかったんだということに――――…             .
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