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「だとさ」
その言葉に先に反応したのは、恨めしい、事の原因をつくったやつ。
何がだとさ、だっ!!
とは思ったけど、これ以上事を荒立てないためにも、唇をきゅっと結び顔を上げ、前を見つめる。
と、壇上のやさしげな何とかさんと目が合う。
声を出すわけにはいかないけれどせめて、と思い座ったままではあるが頭を下げ、反省と謝罪の意を表す。
「では最後に、新入生の皆さん、本日のご入学、本当におめでとうございます」
締め括りの挨拶の言葉に再び顔をあげれば、壇上からにこり、と微笑みを返してくれる。
わざわざ式に参加して下さった方の話をあろうことか、大声で遮ってしまった僕にそんな風にしてもらえるなんて、申し訳ないやら改めて自分の冒してしまった失態が恨めしいやらで、泣きたくなった。
それからは、感謝してもしきれないほど紳士的な対応をして下さったあの人のおかげで、(覚悟をしていたよりは)事が大きくならずに順調に式が進行された。
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