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五月雨キラキラ降るころに
君は決まってココアをねだる。
「何やってんの」
「ココアちょうだい」
ノックがして、扉を開けると君がいた。
外は雨。
君の髪からは水滴が落ちる。
「傘くらいさしてよ」
雨が降ると必ず君は傘をささずに来るから、もう慣れたよ。
「ありがとう」
すでにスタンバイしてあったタオルを渡す。
「靴下脱いで。床ふくの大変なんだから。」
君は黙って靴下を脱いで部屋にあがる。
「はい」
君がソファーに座ると同時に、湯気のたつココアを渡す。
「早いね」
「雨が降るたびに言われてたら、誰でも覚えるよ。」
ぼくは自分の分のココアを入れて君の隣に座る。
「ごめんね」
「何を今更」
『雨が降るとさみしいよ』
いつか君が呟いた。
外はいまだ雨が降りやまない。
理由は聞かないよ。
ココアでいいならいつでもだすよ。
君の落ち着ける場所でいたいから。
「ありがとう」
君の笑顔を近くで見ていたいから。
おしまい
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