死神の抱擁

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「私、千代と申します。昨日はありがとうございました。すみません、どうやら私のせいで、風邪を引いたみたいですね」 「いや、それは良いんだけど、なんで家が分かったの?」 達也の疑問に女性は少し微笑んで答えた。 「ふふ、あれからこの辺りの人に聞いたらすぐに分かりましたよ。傘もささないで走ってた人は貴方だけだったみたい、まさか昨日の場所からこんなに離れてるとは思いませんでしたが」 それでも簡単に見つかるはずは無い、恐らくはかなりの時間をかけて探したのだろう。 達也も薄々感付いていたが、口に出すのは不粋だと思いその事には触れない。 「それはありがとう、風邪もそんなに酷くは無いから大丈夫だよ」 これも嘘だ、達也の風邪は誰が見ても軽症には見えなかった。女性もそれを察した様だ。 「あの、失礼かとは思いますが、私のせいて風邪を引かせてしまったのだし、今日は看病させて貰えませんか?」 会ったばかりの女性をいきなり部屋に招くのには抵抗があったが、何分風邪もしんどい、達也は迷いながらも女性の好意に甘える事にした。 これがきっかけとなり、二人はそれから何度か休日を共に過ごしたりする事になった。 達也は少しずつ千代に恋心を抱く事になる。 数ヶ月後。 次の休日に、達也はついに千代に想いを打ち明ける決心をした、千代も恐らくは達也に好意を持っているだろう。 いつも通り食事を済ました後、近所の公園に誘い、達也は意を決して想いを打ち明けた。 「千代、あのさ、俺千代の事が好きなんだ」 すると、千代は少し悲しい顔を浮かべ、口を開く。 「私も達也君の事が好きだよ、でもごめんなさい、貴方の気持ちには応えられない」
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