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「先輩止めましょうって」
「うるさい!俺はどうしても金が欲しいんだ」
言葉通り、先輩はなんとしても金が欲しい様だ。俺はそれを引き留めようとしている。
「気持ちは分かりますが……そんな金になんの意味があるんですか!!」
「だまれだまれ!良いんだよ俺は!」
実際、こんな事で金を手に入れても意味はないだろう。しかし先輩は俺が止めるのを余所に作業に入った。
「先輩!今ならまだ間に合います!考え直して下さい」
彼が作業をやめる様子はない。もはや全く聞く耳を持たないみたいだ。
しかし、先輩がここまで金に執着していたとは知らなかった。普段はむしろ興味無さそうな人だったのに、やはり人間は上辺だけでは分からない。
見放そうとも思ったが、バレたらこの男は、世間の笑い者だ、恐らくニュースにもなるだろう。仕方ない……無理矢理止めるか。
決心した俺は、半分ほど金色の絵具が塗られた銀メダルを先輩から奪い取り、水道へ走った。
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