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死にたい。
僕がそう思ったのはいつからの事だっただろう?
ずっと、ずっと、辛い事に耐えてきた。でもそれもそろそろ我慢の限界だ。
今まで、いくつもの自殺サイトを、インターネットで探した。
だが、気に入った死に方は未だ見つかってはいない。どれも苦しそうな死に方だったからだ。
出来る事なら、苦しまずに楽に逝きたい。でもそれも限界だ、もう手段は選ばない、とにかく死にたい。そう考えていた矢先だった。
パソコンのメールフォルダに一通のメールが届いた。
タイトルは、安らかな死に方。
少し疑いを持ったが、もし本当なら渡りに船だ。僕は取りあえずメールの本文を読む事にした。
「このメールは、自殺サイトを何度も眺めている方へのみ、お送りしております。安らかで、苦しさなど微塵も感じない死を、ご提供致します。ご希望・お問い合わせの方は当メールへご返信下さい。」
僕は半信半疑ながら、メールに返信した。
「本当に苦しまずに死ねますか?」
5分も経たないうちに返信がくる。
「痛みも、苦しみも感じる事はありません。どうせ、捨てようとするその命、私共に任せて頂ければ、後悔だけは与える事はありません。もしご希望でしたら、明日、午後1時に近隣の○×駅東口までお越し下さい」
そのメールを見た僕は、ダメで元々、その駅へ行って見ることにした。
どうせ捨てるつもりの命である。もし何らかの詐欺だったとしても、その後死ぬつもりの自分には、全く関係が無い。
次の日、1時10分前に、指定された駅の東口まで来ると、何人か僕と同じような目をした人を見つけた。
その中の誰ともしゃべる事なく、約束の一時を迎えると、添乗員のような格好をした男が、声を張り上げる。
「昨日のメールを見てお越し頂いた方、どうぞこちらへ」
少し戸惑ったが、何人かが、その男について行ったのを見て、僕も後を追いかけた。
男に案内されたのは、何の変哲も無いホームだ。次の電車が来るまでに、あと十分はあるだろう。
ところが、時刻表には書かれていないはずのこの時間に、あろう事か、向こうから蒸気機関車が走ってくる。
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