世界走破

2/4
前へ
/92ページ
次へ
死にたい。 僕がそう思ったのはいつからの事だっただろう? ずっと、ずっと、辛い事に耐えてきた。でもそれもそろそろ我慢の限界だ。 今まで、いくつもの自殺サイトを、インターネットで探した。 だが、気に入った死に方は未だ見つかってはいない。どれも苦しそうな死に方だったからだ。 出来る事なら、苦しまずに楽に逝きたい。でもそれも限界だ、もう手段は選ばない、とにかく死にたい。そう考えていた矢先だった。 パソコンのメールフォルダに一通のメールが届いた。 タイトルは、安らかな死に方。 少し疑いを持ったが、もし本当なら渡りに船だ。僕は取りあえずメールの本文を読む事にした。 「このメールは、自殺サイトを何度も眺めている方へのみ、お送りしております。安らかで、苦しさなど微塵も感じない死を、ご提供致します。ご希望・お問い合わせの方は当メールへご返信下さい。」 僕は半信半疑ながら、メールに返信した。 「本当に苦しまずに死ねますか?」 5分も経たないうちに返信がくる。 「痛みも、苦しみも感じる事はありません。どうせ、捨てようとするその命、私共に任せて頂ければ、後悔だけは与える事はありません。もしご希望でしたら、明日、午後1時に近隣の○×駅東口までお越し下さい」 そのメールを見た僕は、ダメで元々、その駅へ行って見ることにした。 どうせ捨てるつもりの命である。もし何らかの詐欺だったとしても、その後死ぬつもりの自分には、全く関係が無い。 次の日、1時10分前に、指定された駅の東口まで来ると、何人か僕と同じような目をした人を見つけた。 その中の誰ともしゃべる事なく、約束の一時を迎えると、添乗員のような格好をした男が、声を張り上げる。 「昨日のメールを見てお越し頂いた方、どうぞこちらへ」 少し戸惑ったが、何人かが、その男について行ったのを見て、僕も後を追いかけた。 男に案内されたのは、何の変哲も無いホームだ。次の電車が来るまでに、あと十分はあるだろう。 ところが、時刻表には書かれていないはずのこの時間に、あろう事か、向こうから蒸気機関車が走ってくる。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

719人が本棚に入れています
本棚に追加