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明日は十五夜。
大勢の大人は明日、お団子を供え、すすきを飾り、星を見ながら、酒を飲み交わす。最近流行りだした文化だ。
月では、長い耳のウサギが、杵と臼を使い。ぺったんぺったん。
地球で待っている大人たちが、ウサギの作るお団子を待っている。
みんなの為に、ウサギは休まず、ぺったんぺったん。
どんどん、美味しそうなお団子が出来上がる。
その頃、宇宙船を使い、次々とみんなは宇宙を渡りだす。
全員分のお団子を作り終えたところで、ウサギは明日にそなえて休みを取る。
そして、待ちに待った十五夜だ。地球から渡ってきたみんなは、一日中ウサギ達と一緒に月でお酒を飲み交わす。
今年の十五夜はこれで終わりだ。ウサギさん、今年もお疲れ様でした。
お月見という風習が廃れ数百年。
今は、ウサギの衣装を着たコンパニオンと、手作り団子をつまみに、月で星を眺めながら、酒を飲む。
先人たちが見たら、さぞかし怒り心頭だろう。
だが、世の男たちは、これが止められない。今や、年に一度、予約殺到の人気ツアーである。
十五夜が風流だと言う感覚は、悲しくも、遥か昔に、消え去ってしまった。
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