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傍からみると、何の変哲もない街。だがこの街には一つ、他にはない名物があった。
世界一きれいな夜景である。
全国を探し回っても、この街ほど綺麗な夜景は二つとないだろう。
唯一、夜景が見えるその高台には、毎日多くの人々が訪れている。
ある日、とある金持ちの男がその高台を訪れた。
「素晴しい、なんて綺麗な眺めなんだ。そうだ、今年の彼女への誕生日プレゼントはこれにしよう」
その男は、夜景の美しさに感動し、彼女の為にここを自分のものにしようと企んだ。
次の日、男はさっそく百万ドルで高台のある土地を買い占め、許可の無いものは入れないように守衛室を設けた。
街の住民は次々と抗議したが、男は取り合わず、結局誰一人として夜景を眺める事が出来なくなってしまった。
これで、夜景は自分のものだ。男は恋人にその夜景をプレゼントしようと、二人で高台へと向かった。
だが、二人が夜景の見える高台へと着いた所、真っ暗で肝心の夜景は無くなってしまった。
あまりの横暴に、住人が灯りを消してしまったのだ。
「こんな所につれて来て、プレゼントが暗闇なんて、馬鹿にしてるわね」
彼女は怒りをあらわにし、男を残し去っていった。
それ以来、『百万ドルの暗闇』と言う笑い話が街で流行し、男は長い事語り継がれる事となった。
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