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少し肌寒い十月の休日、洋子は趣味であるフリーマーケットに来ていた。
いつもの様に掘り出し物を探して歩いていると、一つのカメラが目にとまる。
おそらくは年代物であろうそのカメラは、古ぼけていながら、どこか輝きを放っていたように見えた。
洋子はそのカメラが欲しくなり、売り手の男に話しかけた。
「このカメラ、おいくらですか?」
すると、男は嬉しそうに答える。
「これはずいぶん年代物だからね、千円でいいよ。使えるかどうかは分からないけどね」
千円と言われ少し迷った顔をした洋子だったが、結局そのカメラを買うことに決めた。男に千円札を差し出し、カメラを受け取る。
その後、一通りフリーマーケットを見てまわり、何点か買い物をした所で、洋子は帰ることにした。
帰宅途中、ふと写真屋が目に付いた。そういえば、このカメラはちゃんと使えるのだろうか?
気になった洋子は、その写真屋へと入っていった。
写真屋の店員に聞いた所、特に異常は無い様だ。カメラが使えると聞いて満足した洋子は、その店でフィルムを買い、家路についた。
部屋へ入り、早速カメラにフィルムをセットしてみる。フィルムをカメラに収めると、洋子は無性に何かを撮りたくなった。
とりあえず目についたので、窓から見える夕焼けを写してみることにした。
シャッターのボタンを押すと同時に、カメラ独特の機械音が聞こえる。
「うまく取れているかな?」
洋子は期待しつつ、その日するべき事をすまし、わくわくしながら眠りに付いた。
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