正夢カメラ

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あまりにカメラの事を考えていたからだろうか、洋子の夢の中では、夕方撮った窓からの景色が流れていた。 次の日、目が覚めた洋子は、仕度を済ませ、職場へ向かう。 仕事が終わると、職場まで持ち込んでいたカメラを鞄から取り出し、帰る前に友人などを撮影した。 その日の夜、不思議なことに、またも夢の中に、カメラで撮った友人が流れる。 ただ、少し違うのは、友人が上司に怒られていると言うことだ。 次の日、洋子が見た夢は正夢となり、その友人は昨日撮影した時間に、上司に怒られた。 不思議な事もあるものだ、と思った洋子だったが、この日も写した映像が夢で流れ、次の日正夢になってしまった。 洋子は気づいた。これは撮った映像が夢で流れ、それが正夢になるカメラだったのだと。 洋子は面白くなり、手当たり次第に写真を撮り、夢の中でその未来を楽しんだ。一日に何枚も撮った日は、撮った分全ての映像が流れた。 次第にフィルムも少なくなったところで、洋子は思いついた。自分の姿を映せば、自分の未来が見えるかもしれないと。 早速実行に移した洋子だったが、次に見た夢は、予想だにしないものだった。 カメラのシャッターを押すと共に、自分がカメラに吸い込まれる夢を見たのだ。 こうなるともう二度とこのカメラは使えない。とりあえずシャッターを押さなければ、正夢になることも無いだろう。 洋子はカメラからフィルムを抜き取り、二度と使えないこのカメラの処理を考えた。持っておくとどうなるか分からないからだ。 考えた洋子は買った時と同じフリーマーケットにこのカメラを出品する事にした。 次の休みにフリーマーケットの会場へ行くと、カメラを売ってくれた男と出合った。 男はにこやかに話しかけてきた。 「やはり人間考える事は一緒だな。実は僕もそのカメラで自分を撮ってしまい、ここに売りに来たんだ。僕も売りに来た時に前の人に聞いたんだが、僕で二十人目らしい。もうそのカメラはこのフリマの名物商品だよ」 彼が言うには、カメラは持ち主が変われば、次の人間がシャッターを押しても大丈夫らしい。 次の持ち主が誰になるか分からないが、このカメラはこれからも、このフリーマーケットで次の持ち主を探し続ける事だろう。
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