曇り空

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今日は曇りだ、雨よりはマシだが、やはり気分は優れない。 じめじめしたこの空気を吸うと、心までじめじめしてくる。 そう思いながら、帰宅路をあるいていると、向こうから来る男も浮かない顔をしていた。 向こうも同じことを思ったのかは知らないが、俺と男は目が合ってしまった。 俺がびっくりして立ち止まると、彼も立ち止まる。 「あ、こんにちは」 微妙な気まずさから、思わず挨拶をしてしまった。 すると向こうも挨拶を返してきた。 このまま分かれるのも、何か気まずいので、俺は思い切って男に話題を振ってみる事にした。 「空が曇ると、気分までどんよりとしてきますね」 「ええ、そうですね。雨よりはマシなんですが、やはり晴れと比べると気分は優れません」 男は苦笑しながら返事を返してきた。 やはり俺と同じ事を思っていたようだ。 それから、偶然道端で出会った俺達は、数分話したあと、意気投合し近くに停めてあった男の車で、飲みに行く事になった。 こんなことは初めてだ。不思議と嬉しい感覚でいっぱいになった。 数時間ほど男と楽しく酒を飲み交わしたあと、男と別れた。 今日は曇りの日にも関わらず、楽しい気分で家路につけた。 家の前に着きタクシーから降りる。家へ帰ると、今日の出来事を思い出しながら、ゆっくりと眠りについた。 翌朝、目を覚まし新聞を開くと、一面には飲酒運転事故で、三人もの人を巻き添えにしつつ運転手が死んだという記事が載っていた。 写真を見ると昨日の男だ。車に乗って帰ったのか……。やりきれない気分だな。 家を出ると今日も空は曇っている。曇り空は雨より嫌いだ。
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