無職

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 昨日、解雇の話をし終わった頃、緊急で話を告げに来た隊員が言っていた。  病院が襲撃されて、また、時間が矢のように過ぎようとしている。ユーリと連絡を付けようとメルは送ったが、その返信は未だに届いていない。  解雇されたので、後は出て行く準備をするだけのスピカだったが、事務所に戻るのが億劫で、島を徘徊していのだ。 「そうそう、なんでも、博士が撃った弾が敵の左腕と腹を射抜いたそうだ。追っかけた警察隊員もあれは助からないだろうってことで、馬車の追跡は止めて包囲に徹してるんだ。この、借り物競走の中で逃げられる悪党はいないだろうけどな」  言って、クロスは豪快に笑う。確かにとスピカは頷いた。  借り物競走は単なる暇潰しもあるが、島全体を警備する目論見もある。ただ、任務遂行ができないと変なペナルティが貸せられる為に、何人かが要らない熱を上げ、無駄な争いに発展する傾向は、今も昔も同じらしい。 「盗まれた船も、怪しい船も発見されていない。東側の入江には見張り番を立てているらしいから、問題は無いと思う。船の搭乗も規制が引かれて、簡単には島に出入りできない状態だ。上手くすれば打ち止めも近いだろう」 「僕がさまよってる間に、随分話が進んでますね」
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