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ここはグランガイア…ゴブリン達が集う国。
縄張り意識の高いゴブリン達は、日々自分達の縄張りを広げようと戦い続けている。
そして、今日も戦争をしてきたゴブリン達がグランガイアに戻ってきた。
「みんな、おっ帰り!怪我しなかった?僕が診てやるからコッチに集れ~!!」
そう声を張り上げたのは、グランガイアで唯一の軍医、カラコだ。
軍医、とはいえ…包帯を巻く事しかできない。
「いてて……もうちょっと優しく巻いてくれよ…カラコさんよ」
「駄目だよ。しっかり巻かないと菌が入るぞ!
…ガシャはいっつも怪我するな。少しはヒドゥを見習えよ」
カラコはそう言いながら包帯をピンでとめる。
「いたたっ!!…あ?ヒドゥ?アイツだって怪我してるよ!
ただお前さんとこに診せに来ないだけさ」
「え!?」
ガシャの言葉に驚き、カラコは顔を上げた。
(ヒドゥが……怪我!?)
「……なんだ?知らなかったのか。多分アイツ、川にいるぜ」
怪我するといつもそうなんだ、とガシャに言われ、カラコは慌てて川へ向った。
何処の川、と教えられなくともグランガイアに水の川は一つのみ。
全速力で川に辿り着くと、ヒドゥの影がそこにあった。
「はぁ、はぁ…ヒドゥ!!」
息が切れ切れのカラコは、精一杯声を振り絞り、叫んだ。
その声に弾かれたかのようにヒドゥは振り返る。
「…ビックリしたぜ……何の用だよ、カラコ」
ヒドゥは上の服を脱ぎ、傷口を洗っていた。
「お…お前!!怪我してるんだろ!っはぁ……何で診せに来ない!!」
カラコは肩で息をしながら言う。
その姿を見て、ヒドゥはため息を吐くと、こう返した。
「かすり傷だよ、こんなもん。
それにお前、治療下手じゃん。薬一つ作れないんじゃ治療受けたって意味ねーしー?」
んべっと舌を出し、カラコに背を向ける。
「………な…なんだよ。せっかく心配して来てやったのに……あんまりだ!!
もうお前なんか…絶対治療してやんないんだからな!!」
カラコは泣きながら、その場を走り去って行った。
ヒドゥは一人で傷口に水をかける。
「……それでいーんだよ…」
ぼそりと呟く。
「オレなんかに構ってたら…
過労死しちまうじゃねーか……」
カラコが落として行った包帯を拾い上げ、
そっと キス をした……
END
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