1473人が本棚に入れています
本棚に追加
「行ってきまーす」
今日も彼女は、学校とは反対側へ向かって歩く。いつも一緒に居る、大好きな幼なじみの元へ。
毎度のことながら、朝の彼はインターホンの音にすら気付かない。
それをわかっていても、律儀な彼女は毎回インターホンを押すのだ。
彼がまだ寝ていることを確認してから、合い鍵を取り出して、鍵を開けると、彼女はやっと彼の家へと入る。
彼が高校にあがる半年ほど前に、彼の父親がロンドンへの引っ越しを決め、一緒に行くことにした彼の母親がくれたのだ。
その時に「秋ちゃんの世話、適当でいいからやってくれない? あの子、ほっとくとご飯もまともに食べないから」とも言われていた。
彼を起こす前に朝食の準備をする。
絵的には、制服を着た新妻っぽいが、彼女にとっては照れも躊躇いもない日常だ。
「よし! 秋人お!」
階段をパタパタと音を立てながら上がり、秋人の部屋の扉をノックする。
が、いつまで経っても返事がない。
これもいつもと同じこと。
最初のコメントを投稿しよう!