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毎日ちょっとだけ見せてくれる魔法に俺は心踊らせ、一週間という時間などあっという間に過ぎていった。
そして、最後の日──
「では、お世話になりました」
と、じいさんに挨拶を済ませて門の前。
「蒼ぉ~、帰っちゃうの?」
「ごめんね陽輝。私はやらなきゃいけない事があるの。だから分かって。ね?」
そう言う彼女は申し訳なさそうな悲しそうな、そんな顔をしていた。
「やだあっ!! やだよぉ……! だって……ひっぐ、蒼が居てくれて、お母さんができたみたいで嬉しかったんだもん!」
俺は嗚咽を漏らしながら言った。
物心がつく前に両親が死んだので、親の記憶など殆んどないに等しい。
だけど、幼稚園のときの送迎、夏休み前にあった授業参観。
友達の親を見て羨ましいと思っていた。
そして現れた彼女。頭を撫でてくれる、抱きしめてくれる。
そこからは記憶にないはずの、赤ん坊のときの温もりを感じた。
「ごめんね……」
そう言いながら彼女は、優しく俺を抱きしめた。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁん!!」
止めどなく溢れる涙。
いつの間にか、彼女も泣いていた。
どれ程の間そうしていただろう。
しばらくすると彼女は俺の方へと向き直り、こう言った。
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