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何でこんな言い方をしたかは今でも分からない。
しかし、彼女は名前と同じ青色の瞳で真っ直ぐと俺の目を見つめて、
「坊や、キミは魔法を信じる?」
なぜ名前で呼んでくれなかったのだろう?
なぜそんなことを聞いたのだろう?
思い返してみると疑問が出てくるが、当時の俺は、
「信じるし忘れない! 絶対に忘れないよ!!」
精一杯の強がり。
涙声を出さないように大声でそう言った。
「そう、よかった……それじゃ、少しだけ目を瞑ってくれる?」
安堵した様子の蒼に言われるがまま目を瞑ると、額に温かい感触。
「いい陽輝? 今のはちょっとしたおまじないのようなもの。また会える可能性と助けてもらったお礼を込めて、キミに魔法のタネをね、入れさせてもらったの。
キミがもっと大きくなって素敵な男の子になる頃に、キミは魔法使いになれるんだ。
それがまた出会う可能性になるから。だから今は我慢して。
このさよならはまた会うためのさよならだから。
───キミが素敵な男の子になっているのを楽しみにしているよ」
彼女はそう言って、目の前から姿を消した。
残ったのは額の温かい感触。
俺はまた、大きな声で泣いた。
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