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夜十一時までのバイトを終え、帰り仕度を済ませてさあ帰るぞ。
というところで後ろから声がかけられる。
「お疲れハルちゃん。ど~したの今日はぁ? 随分とお客さんを気にしてたみたいだけどぉ?」
独特の間延びしたゆったりボイスに振り向くと、バイト先のコンビニの店長、茜さんだ。
「ああ、今日みたいな日にはちょっとした思い入れがあるんですよ」
「なになに? どんな思い入れがあるのぉ? お姉さん気になっちゃうな~」
ニコニコと笑顔で尋ねてくる茜さん。
こんなことを言ってはいるが、茜さんは余計な詮索はしない人だ。
いつも面白半分……いや、九割で冗談を言ってくる。
ただ、気づいた時には誘導尋問になってたりするのがネックだが。
でも最近では大体察知できるようになったんだけどな。
何故かって?
そりゃ一年以上もバイトやってりゃ嫌でも分かるもんじゃない?
「あっはっは。秘密ですよ」
少しだけ遠い目をしつつそう答えて帰路につく。
どうやら淡い期待はとうとう届かなかったみたいだ。
「はぁ~あ、ただいまー……あ?」
ため息つきつつ家の門をくぐると、庭の雰囲気がどこかいつもと違う気がした。
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