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「神さま~! 何をしておられるんですか~?」
「なぁに、大した事ではないよ」
神様、と呼ばれた者は、叫びながら飛んできた幼い天使に優しい声を返す。
──ここは天界。
天使が飛び交い、神が統べる世界。
「じゃあ何でここにいるのですか?」
幼い天使はさらに問う。
「少々特殊な、気になる運命が動き出しそうだからね」
真っ白く縮れた長髪に、これまた長く縮れた白い髭を蓄えた神様は言う。
ここは天界の中でも特殊な場所。
下には多種多様、数多くの歯車が足の踏み場のないほどに散らばっている。
神様や天使は常に浮いている為、何も支障はないのだが。
そしてその奥には、また多くの、上部に輪のついた、歯車の欠けているカラクリ模型がある。
その全ての題名が『運命』。
「ほら、見てごらん。歯車が一つはまるよ」
神様がそう言うと、歯車の一つが宙に浮く。そしてそのまま、カラクリ模型の一つにはまりこんだ。
「うわぁー! すごいです!! これからどうなるんですか?」
好奇心旺盛な幼い天使は、目を輝かせた。
しかし、それとは反対に神様は悲しげな顔をする。
「これはね、このままだととても悲しい結果で終わってしまうんだよ。でも私はね、人間とはそんな予定された運命を覆す生き物だと思っている。だからそんな淡い期待を込めて今こうして見ているんだよ。ほら、そこに書いてある名前の子が運命を覆すかもしれない子だよ」
はまりこんだ歯車には名前が彫られてあった。
『南 陽輝』(ミナミハルキ)
と──
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