『少しだけ寂しさを感じながら願ったこと』

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『少しだけ寂しさを感じながら願ったこと』 初めて君に逢ったとき。 ぼくは、君の美しさに目を奪われた。 そのときの君は、少しだけ冷たそうに見えて。 正直、ぼくは君を。 苦手なタイプだと思ったんだよね。 二回目に逢ったとき。 ぼくには、まるで君が。 全く、別の女の子みたいに見えた。 あぁ、君は。 そんな風に笑うんだ……。 ぼくの君に対する間違った印象が。 君の、そんな笑顔を見たとき。 一瞬にして、消え失せてしまったんだ。 「もし良かったら、今度食事でもご一緒しませんか?ゆっくり話がしたいですし……」 別れ際に、ぼくは。 君に、そんな言葉をかけながら。 じっと、君の瞳をみつめた。 君は、ただ楽しそうに笑うだけで。 ぼくは、少しだけガッカリしたっけ。 そして、三度目に逢ったとき。 君は、ぼくに。 また、違った顔を見せてくれた。 本当に、飾りなく。 自分の気持ちを素直に話す君が。 ぼくには、とても眩しく見えたんだ。 君がいま、大好きだと言う人の話を聞きながら。 ぼくは、それでも平気な顔をして。 君に、男の素直な気持ちを教えながらアドバイスする。 その時、ぼくは感じていたんだ。 偶然の出逢いは、本当にいくつでもあるけど。 こんなに居心地が良い相手は、めったにいないって。 その時、確実に。 ぼくは、君に惹かれていた。 でも……。 ぼくは、君をじっと見つめながら。 心の中の、そんな声を封印する。 そう言えば、今日は七夕だったよな……。 君と別れたあとの帰り道で。 ぼくは、梅雨空の雲の隙間に見えた。 輝く星を見上げながら、願ったんだ。 君が幸せになりますように、って。 うん。 少しだけ、寂しさを感じながら。 『少しだけ寂しさを感じながら願ったこと』 了
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