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少年は自分の頭上に置かれた掌を振り払おうとするが、その強力な力に屈し、掌を上目遣いで恨めしそうに睨みつける
校長はその姿を見て再び「ほっほっほ」
と声を上げて笑う
笑い声を聞き終えた後、三本傷の大男……教員は校長に再び口を挟む
「しかし校長……どういうおつもりです?
由緒ある入学式に……ダミを使うとは」
男は入り口の先……入学式が行われているホールを目配せし、校長に問い掛ける
少年も見ていた入学式の光景
今まさにホールの壇上には校長と呼ばれた人物と寸分違わぬ格好の人物が入学の弁を述べている
男の疑いの視線に校長はまらしても「ほっほっほ」と笑い声を上げる
そして校長が口を開く
「いやぁ、私、寝坊しちゃいましてねぇ
今来たところなんですよねぇ」
しばらくの沈黙の後、男は「信じられない」と言った表情で校長を見つめる
「こ、校長……あなたと言う人は校長の自覚が足りないのでは……?」
プルプルという肩の震えが右手を通して少年にまで届く
そして少年の顔も震える
「低血圧なもので……朝が弱いのですよ」
少年は窓の外に目をやるが
外は誰がどうみても真っ暗闇、三日月がぽっかりと浮かんでいるだけであった
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