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三日月はその横顔で小鳥を魅了する
小鳥はさえずるのを忘れ、まばらに散らばる星をバックに
その月景を堪能している―
聞こえるのは
少し冷たい夜風に吹かれる木々の微かなざわめきと……
「……クー……」
月を真上に臨む丘に仰向けに寝転がる
少年の寝息だけである――
「ん゛ー……んがっ」
風の悪戯でめくれたワイシャツのすそ
そこから見える少し白身を帯びたお腹をぽりぽりと右手で引っ掻く
「……グー……」
静かな夜の空
聞こえるのは木々のざわめきと……
ジリリリリリッ
ジリリリリリッ
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ「うるせぇ」
ガキョン
けたたましいベルの音を鳴らす目覚まし時計
それはやっとの事で起きた少年によって遥か遠くへと投げ飛ばされた
再び、丘は沈黙で包まれる
そして……
丘の中心で少年は立ち上がり、大きく背伸びをした
零れる唸り声目覚めの悪い“夜”
そして、粉雪のような月光を全身に浴びて少年はつぶやいた
「……遅刻だ」
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