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赤レンガが不規則に散らばる
そして、足跡のスタンプがそれを一直線に駆け抜ける
一寸先は闇
少年はそこへ飛び込む
少年は風
夜を駆ける風――
「……めんどくせ」
少年は再び立ち止まる
それは、諦めか……
―少年は暗闇の向こうを
一点に見つめていた―
夜道を走る少年
年の頃はまだ少しあどけなさを残す中学生ぐらいの年齢だろう
暗闇に映える白のワイシャツ
暗闇に溶ける黒いチェックのズボン
一見すると、それは学校の制服のようにも見える
―どこにでもいる
普通の学生―
大体の人々がそう答えるだろう
―ただ一つ、銀色に似た
ショートカットの白髪を除けばであるが―
「……ふぅ」
汗一つ流れない横顔が暗闇に浮かぶ
少年は冷たい空気を深く吸い込む
そして……
タンッ
地面を蹴る音とともに
少年は空へ飛び出した
一寸先の月
手さえ届きそうな三日月
少年は風
空を駆ける漆黒の羽――
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