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パチパチパチ……
まばらな拍手が、ホールから聞こえる
先程の少年はそれを聞くと、頭を抱えて大袈裟なポーズをとった
「もう始まってるじゃん……入学式……」
思わず口に出してしまう心の声
少年は再び壁に張り付くような姿勢をとり、ホールを横目に見る
ホールで現在進行形で行われている“入学式”
少年はそれに遅刻したようだ
……こっそり入ろうにもなぁ……
心の中で嘆く理由は入口にある
少年がいる廊下の先
開かれた入口に寄り掛かり偉そうに腕を組む一人の男性
定期的に咳ばらいをしてはギラギラとした目つきで廊下を監視している
少年はその様子を見つからないように眺めていた
トントン
「わっ!?」
背中を叩かれた音に少年は驚き、小さい声が漏れる
「静かに」
「!?……」
背中から聞こえる囁き声が少年を黙らせた
少年はゆっくりとホールの入口を見る
男性は頭を掻きむしり退屈そうに腕時計で時間を確認していた
入口の男性には気付かれなかったようだ
「よかった……気付かれなかったんだね」
後ろから聞こえる声
少年は少し速くなった心臓の鼓動を隠し後ろに振り向いた
「君も遅刻?
実は私も……」
女の子が座っていた
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