序章:始まり、そして…

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ふと意識が戻り、 暗闇の中にいる自分に気付く… 〔こ、ここは…〕 何が起きたか、 今、自分がどこにいるのか、 分からない… 〔思い出せない…〕 ふと耳を澄ませば、 誰かの声が聞こえる… 『今は…だ、死ぬ…けには、  い…のだ…』 細いその声は、 どこから聞こえるのか… 全てを聞き取る事が できない… 何より体が 岩のように重い…。 また声が聞こえる… 『…のだ、ラファイ。  目覚めるのだ、ラファイ』 〔ラファイ?  俺はそんな名ではないぞ、  そうだ俺は悠哉、  澤崎悠哉…っ痛…〕 頭に激痛が走り、 おぼろ気な記憶が 頭をフラッシュバックする… いつものように、 一人学校帰りのバスに乗り、 一番前の吊革をつかんで、 窓から見える、 家路を急ぐ人の流れに 目を向けていた… 次の瞬間に聞こえた、 耳をつんざくブレーキ音、 そして右半身への衝撃、 全身の激痛… 〔あれは何かにぶつかったのか?  事故…?〕 急に周りの音が、 はっきりと聞こえ始めた…。 慌ただしい人の声、 耳慣れない電子音…。 〔ここは病院なのか…?  俺は生きてるのか…?  俺をラファイと呼んだ、  さっきの声はいったい…?〕 「先生っ!  患者意識は不明ですが脈拍、  数値が正常値に!」 「よし、助かるぞっ!」 その声と共に、 また意識は闇の中へと 落ち行く…
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