序章:始まり、そして…

3/5
前へ
/67ページ
次へ
暗闇の中… 「今、あなたに負ける訳には、  いかないっ!」 「怯むなっ、行けっ!  とどめを刺すのだっ!」 声が飛び交うが、 初めて耳にする声ばかり… 意識が飛ぶ… そしてまた… 『…ァイ、…ラファイ…』 あの声がする… 〔誰なんだいったい…〕 ふと右手に 冷ややかな感触を覚え、 急に意識が戻ると共に、 目が覚めた。 病室に横たわる自分、 その隣に立つ金髪の少年と、 椅子に座り、 俺の右手を握る 綺麗な黒髪の女性。 〔つ、冷たいっ!〕 握られた手が 氷のように冷たい… 声に出して 引き離そうとしても、 体は言う事を聞かず、 声にもなっていなかった… 『ラファイ、お前には失望したよ』 少年が口を開く、 いや、声にはならず、 口も動いていない。 なのに聞こえる… 脳に直接届く声… 〔俺はそんな名前じゃねぇ  悠哉だっ〕 声は出ない、 しかしすぐに答えが返る。 『こちらの世界で  どう呼ばれているかが、  今の問題では無いっ』 子供のくせに 偉そうに話かけてきやがる… ん?こちらの世界…? 『問題なのはラファイ、  貴方が今こうして、  ここに横たわるっている  ことなのよ』 どうやら、 氷のように冷たい手をした 女性の声か… もちろん彼女も 声を発しているのではなく、 心に直接アクセスしている感じだ… 『いつまでこうして  いやがるつもりだ!』 〔いつまで?俺は何日  意識を失ってたんだ?〕 『もう20日になるわ』 〔20日間!?  いったい何があったんだ?  お前達は誰なんだ!〕 ガタッ… 病室の扉が開く瞬間、 跡形もなく2人の姿は消え、 扉の向こうには、 驚いてこちらを見つめ 花瓶を落とす。 俺が母と呼ぶ人が 立っていた…
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加