序章:始まり、そして…

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「悠哉っ!  意識が戻ったのねっ!  先生に、もう意識は  戻らないかもしれない  と言われてたのよ…」 そう言った母の頬を 涙が伝う。 〔か、母さん…〕 声にならない… 「悠哉っ、  何か伝えようとしてるの?  でもまだ無理よね、  何よりあの大事故で悠哉は  唯一の生存者なんだから。」 〔事故?やはり何か  事故に巻き込まれたのか…〕 「本当に奇跡としか  言えないのよ  衝突時の衝撃で、  全身の骨折と内臓破裂、  それに爆発の火傷…」 〔何っ、俺はそんな怪我で  生きてたのか?〕 「20日間も意識を失ってたけど、  必死にお祈りしてたのよ、  もし悠哉が…  なんて考えたくなくても、  頭をよぎって…。  普段はお祈りなんて  しないのにね…」 また涙がこぼれ、 嬉しさと不安からの 解放感が伝わる… 俺は小学1年生の時、 当時刑事だった、 この人の養子になった。 記憶の断片でしかない、 あの事件からもう10年、 俺を育ててくれた。 今は俺の大切な母さん… 本当の両親が殺されて、 もう10年… 犯人は未だ手掛りすら… 「ごめんね悠哉、  柄にも無く母さん  取り乱したわ。」 と少し、いつもの 笑顔が見える。                       「せっかくもらった  綺麗な花が台無し。  こっち花瓶に  生け変えて来るわ。  悠哉、本当に良かった…」 額に優しくキスをして、 新しい花瓶を手に、 戸口で割れた破片を 片付けて病室を出た… 『ふぅ、何も知らない人間は  気楽なもんだ…』 と先程いた金髪の少年が、 また同じ場所に立ち、 黒髪の女性が その隣に立っていた。 〔おいっ、どこに行って、  今、どうやって現れたんだ!〕 『おいおいそんな事を  言ってるって事は、  覚醒はまだか。  どうなってやがる』 〔どうなってるって、  それはお前達の方だ!〕 『ソネア、この馬鹿に  手短に説明してやれ』 と言って少年は 黒髪の女性を見上げ、 ソネアが冷たい手を俺に伸ばす…
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