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「ごめんね」
ポツリと日和が言った。
「いつもえいちゃんには、迷惑ばかりかけてるね」
「迷惑? たかが荷物一個持ったくらいで大げさだっての。迷惑ってのは、相手が困ってたらそういうんだぜ? オレが自分から持つって言ってんのによ」
「だって……」
「だって?
ひーはさ、なんでもかんでも自分が悪いって思うんだな」
立ち止まり、振り返る。
日和はビクンと立ち止まってうつむいた。
「だって、私、えいちゃんには何もしてあげられないもの」
「はぁ? んなことないじゃん。町の悪ガキんちょとケンカした後は手当てしてくれるし、毎日おいしい弁当作ってくれるし、学校に遅刻しないのだって、ひーのおかげなんだぜ?」
「でも!」
「でもじゃないだろ。っていうかさ、いい加減そういうのやめろよな。なんでいつも、そんなに自分を責めるわけ?」
「違うよ。別に、自分を責めてるわけじゃ、ない。ただ──」
「ただ?」
沈黙が落ちる。
英知の見えない力で日和が射すくめられているのは、容易にわかった。
強張った表情で上目遣いに見つめる姿が痛々しいから、英知は大きく息を吐いて体の向きを変えた。
これ以上言っても、日和を泣かせるだけだ──だから、無言で歩き出す。
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