1・破瓜の封印

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日和は、いつもそうだ。 いつもはっきりとした答えをださずに──出そうとせずに、 「自分でもどうしてだかわからない」 と言って、ただびくびくと英知を見る。 「いっつも、だな」 口の中でつぶやく。 日和はいつも何かに怯えている──そう思えてならなかった。 重い空気。 英知も日和も、過ぎていく時間が、この空気を消してくれるのを待っていた。   〇   〇   〇 英知の後を追うように歩き、日和は後悔をしていた。 (また、えいちゃんを怒らせちゃった) 胸の奥が痛い。 左手で胸元を押さえ、わずかに苦悶の表情を浮かべる。 ──五分ほどで市道から農道に入り、遠く横に伸びる林に目を留めて、日和は表情を緩めた。 「見えてきたね」 思いが声になる。 林の右手奥、木々の合間に赤い屋根がわずかに見えた。 林の向こうに建っていて、かつ木々の緑があるので、二人の家は見えづらい。 「あぁ、そうだな。 ったくよぉ、結局歩きで帰ってきちまったじゃん。バカおやじ」 英知が不機嫌そうに息を吐いて言った。 だが、その口調に刺々しさはない。 本心ではないとわかっているから、日和は口元に笑みを浮かべてうなずいた。 「さぁてと、もうちょっとだな」 「うん……あれ?」 ふと、その白い影に気付き、日和は眉根を寄せると立ち止まった。
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