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気付いた英知が振り返る。
「どうしたのさ」
「えいちゃん、あれ」
「ん?」
日和の指さす方へ視線を向ける。
それは、家の方だった。
「あーあ」
英知は大きくため息をついた。
「まぁたピーコ逃がしたのかよ。恵美のバカ、こっちは疲れて帰るってのによ」
確かに、白いその鳥は家で飼っているオカメインコだ。
いつもは日和が世話をしているのだが、旅行で家をあけている間は三つ年下の妹が代わりにすることになっていた。
「あれって、やっぱりピーコちゃんよね?」
「だろ? あの色の鳥、他に考えられるか?」
「でも……」
日和は不安に高鳴る胸を押さえた。
「なんだか、飛び方が変よ?」
「飛び方?」
鳥は上下左右にふらふらと揺れ、飛ぶ自由を奪われているような、不自然な動きをしていた。
「あー……確かにな。また、粕漬けでもつまみ食いして酔っ払ってんじゃね?」
「そう、かしら」
英知の言うことが正しいと、真実であると思いたがっている自分がいる。
体の中のぞわぞわした思いを消せない日和は、白い鳥をじっと見つめた。
「やれやれ、早く帰ろうぜ。きっと恵美のヤツ、捕まえられないって半ベソかいてオロオロしてるぜ?」
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