1・破瓜の封印

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「うん」 意地悪っぽく笑う英知に、日和がうなずいた、その時だった。 家の辺り──林の向こうで、赤い光が輝いた。 次の瞬間、それは空に走り、光と白い鳥とが重なる。 ギャッ 短く鋭い声が、暖かな空気を凍てつかせて響く。 鳥は、重力のままに落ちて、林の向こうに見えなくなった。 日和は絶句した。 (今のは? 何が起こったの?) 微動だにできず、ただじっと、すでに何もない空を見つめる。 考えれば考えるほど、今見たものが現実だったのかどうか、わからなくなった。 「ひー……」 ビクンと体を揺らして、英知を見る。 「お前も、見たんだな?」 その一言で、今見たものが脳裏に蘇る。 「ねぇ、えいちゃん、今のはなに?」 英知は小さく首を横に振った。 「わからん。けど、なんかヤな予感がする」 英知はゆっくり家の方を振り返った。 「嫌なって……」 「ひー、お前はここにいろ」 言うなり英知が走り出す。 「えっ、えいちゃん、待って!」 後を追って走り出した日和を、英知は怖い顔で振り返った。 「お前は来るな!」 「だって……」 「来ない方がいい。オレが様子を見て来るから、ここにいろ」 ドクンと日和の鼓動が鳴った。
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